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日常にアートが薫る街

【日常にアートが薫る街】

 「春は曙」で始まる「枕草子」ですが、秋の「いとをかしきもの」もご存じですよね。そう!「秋は夕暮れ」が「いとをかし」であると、習ってきました。でもこれには続きがあって、私としてはこちらの方がより秋の風情を感じさせるのではないかと思います。

 「秋は夕暮。夕日のさして山端いと近くなりたるに、烏の寝所へ行くとて、三つ四つ二つなど、飛び行くさへあはれなり。まして雁などのつらねたるが、いと小さく見ゆる、いとをかし。日入りはてて、風の音、蟲の音など、はたいふべきにあらず。」

 昼はまだ暑さを感じても、夜も更けるとすっかり涼しくて、ついつい夜更かしをしてしまいます。風の音、虫の声、伝え来る葉擦れの音、それらすべてが風情を感じさせ、まさしく「もののあはれ」の世界です。

 

 もののあはれ、、、、皆さんもご存じの通り、江戸時代の国学者、本居宣長が提唱した美的理念です。お叱りを承知で簡単に言ってしまうと「しみじみと感じる心の動き」ということでしょうか。美しいもの、有り難きもの、切ないもの、あわれなるもの、苦悩、無常、あるいは憎しみまで、あらゆるものごとに対する繊細な心の動き。ですから「もののあはれを知る」ということはつまり「人の心のセンシティブなところまで感じ取る」ということになるのでしょうか。

 私たちは日本人として共有してきた感性によって、短い言葉であってもその奥に大きく広がる情趣を共感することができます。そこにおおきな役割を果たしているのが文学ですし、それを受け継いできたことこそが「文化」だろうと思っています。

 

 現在、弊舎が起ち上げた「街角アートプロジェクト」を進めるため、アートを展開する会場探しをしていますが(美味しいもの探しとのご指摘もいただいておりますが(笑))、うきは・朝倉、小郡・筑紫野、久留米のトライアングルゾーンにもいろいろなお店があって、それぞれにいい雰囲気を持った空間を作り出していらっしゃいます。そういったお店を舞台にアートを繰り広げようとしているのがこのプロジェクトです。その舞台で若きアーティストが成長し才能を開花させ飛躍してくれる。そんな環境が出来ることを願っています。それぞれのお店が文化の発信源として世に知られるようになったらなんて素敵なことでしょう!もちろん、文化を創り上げるのは、アーティストというよりは実は我々観客の方だと思っています。観客が創り出す文化の中でアーティストたちは成長し、そして我々観客一人一人の心の中にも「もののあはれ」の感覚が育ち、結果として一人一人の人生を奥深いものにする。そんな豊かさ満載の街になることを夢見て前進しましょう、ね♪

 

平成29年10月9日